栃木県埋蔵文化財センター

 
夏の企画展・センター特別公開特設ページ

夏の企画展 とちぎの勾玉展   とちぎ勾玉図鑑

「夏の企画展 とちぎの勾玉(まがたま)展」で展示中の勾玉のなかからご紹介します。順次、追加します。
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 塚山5号墳(宇都宮市)
 浄法寺遺跡(那珂川町)
 欠ノ上遺跡(さくら市)

 

「とちぎの勾玉図鑑」

塚山5号墳〔つかやまごごうふん〕(宇都宮市)(5世紀前葉)

 埋葬施設内の死者の頭の位置と思われる場所から、管玉3枚・ガラス小玉289顆(か)とともに出土した1枚の勾玉です。勾玉の頭部の孔(こう)から放射状に3本の溝が刻まれる丁字頭(ちょうじがしら)勾玉と呼ばれる種類のもの。C字型の胴は細く長い特徴を持ち、断面は孔部が少し楕円になる以外は円形です。表面には一部に粗割(あらわり)時の剥離痕(はくりこん)が認められる以外丁寧な研磨で、使用痕と見られる擦痕(さっこん)が認められます。石材は暗い赤茶色の瑪瑙(めのう)で透明感があり、色は加熱したものです。孔の開け方は片面からで、裏面に孔を開けたときの圧力で割れています。 長さは26.6mm、幅6.4〜9.2mm、重量は4.5gです。(しのゆ)

 宇都宮市教育委員会所蔵

 参考:宇都宮市教育委員会 1996『塚山古墳群』─道路改良工事に伴う発掘調査─ 宇都宮市埋蔵文化財調査報告書第40集

 

※一世紀を初葉・前葉・中葉・後葉・末葉の20年毎に分割

浄法寺遺跡〔じょうほうじいせき〕(那珂川町)

 農耕中に採集されたものです。形状は弥生時代後期後半から末のもので、関東での使用は古墳時代前期の例が多く、北陸東部系製作とされる勾玉の一群にあたります。材質は硬玉(翡翠輝石:jadeite)で、脇部に中央から背部付近に乳白色の細脈が認められる以外、薄緑白色を自色とする輝石中、頭部・顎部付近に斑状の明緑色が内包されます。勾玉は、逆C字型で胴は太く断面は隅丸方形です。逆C字型の平面形状脇部幅は、頭部で14.4mm、胴部14.0mm、尾部11.8mmと、頭部・胴部の幅が尾部に向けて細くなり丸く収められます。断面は全体的に隅丸方形で、逆C字面の脇部は平坦で脇部中央に稜を持たず、C字面は腹部と脇部の画線が最大幅10.2mmで、背部画線まで緩やかに湾曲しながら減じ、9.4mmとなります。頭部は頭頂に向けてC字面は斜めになり、ミガキ面に傷がのこっているので、自然面を利用している可能性があります。脇部の微細な表面の起伏を観察すると、逆C字面の中央は10.3mm、頭部が10.8mm、尾部が10.4mmでややくぼみ、背部はU字型で尾部は隅丸方形の断面です。腹部は平面系半円状で15mm程度の円孤のある棒状もしくは砥石面が半円の内研砥(うちみがきど)と見られます。孔内には三段階の研磨痕跡があり、片面穿孔の後、両側から更に整える研磨を行っている可能性があります。全体的に研磨は荒く、擦痕が多く残るものです。

 長さ36.1mm 幅23.0mm 厚10.8?10.3mm 初孔径3.4mm 終孔径2.0mm 重量16.2g(しのゆ)

 那珂川町教育委員会所蔵

市ノ塚遺跡〔いちのづかいせき〕(真岡市)

 市ノ塚遺跡は、古墳時代前期の玉作製作の遺物が出土する遺跡で、本資料はグリット出土です。形状からは、弥生時代後期から古墳時代前期に作られる例と類似します。石材はメノウ(瑪瑙:agate)で、薄い黄茶色を自色とし、頭部と尾部の一部に明赤茶色の脈が内包されています。勾玉は、頭尾の短い逆C字型で、胴部は太く、断面は楕円形です。平面形状は、頭部から胴部への画線をつくる顎がわずかにつくられ、胴部は丸く湾曲し、尾部は内彎して尖く終わるものです。断面は頭部が方形に近く、胴部は楕円形、尾部は腹部が直線的な半円形状となります。頭部は裁断された隅丸方形を呈し、方板状に形割した際の表面を研磨したもので丸く仕上げていません。現存の厚さからは9.2mm以上の厚みの形割と推測されます。顎部から孔上を通過する頭頂部までの長さは7.7mmです。頭部先端下端は平坦で、砥石面の当たる研磨線上の脇部腹部側から尾部上部にかけて光沢の出る研きがなされています。頭部から胴部への画線をつくる顎は、この光沢部分に抉りを入れて整形し、腹部には画線を設けるものでありません。脇部は尾部に向けて減じ、背面から見ると鋭角の丸い二等辺三角形です。逆C字面に、胴部から背部付近に、凹状の1.4mmの傷が残っいます。また、C字面の同位置には尾部の明赤茶色の脈から伸びる脈の割れ先端に0.15mmの割れがあります。腹部は平坦であり、内研砥による直線的な研磨です。顎部下端に縦方向の割れが認められます。 尾部は幅5.1mmで平滑に仕上げ、先端を直線的にする意図がみうけられるものの、製作途中に割れたものか斜めに仕上げており、その部分から腹部方向に剥離面があります。剥離後、研磨を掛けていますが、剥離痕跡を直すには至っていません。孔内には二段階の研磨痕跡があります。初孔は逆C字面からで、初孔付近は縦方向、途中から斜め方向の擦痕です。押圧貫通片面穿孔で、貫通直前に止め、穿孔剥離があります。初孔周囲は細かい剥離が認められます。初孔の背部側に直線的な傷が頭頂と胴部側にあり、直線的ではないので、それぞれ別個のものです。全体的に研磨は丁寧で透明感のある仕上がりを見せます。

 長さ22.4mm 幅13.35mm 厚6.0〜9.25mm 初孔径3.3mm 終孔径2.1mm 重量3.3g(しのゆ)

 栃木県所有/栃木県埋蔵文化財センター保管