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土器の修復の仕方について
 どのようにして、土器を修復していくのか?福島では体験で土器の修復の講習があるようですが、こちらではないのでしょうか?
 例としての質問(1)土器の破片を接着する接着剤は何を使うのか?(2)土器の無い部分を、石膏で補うとしたら、接着剤として石膏はつかえないのかどうか?(3)土器の破片だけが足らないだけだとしたら、接着剤だけなのかまたは石膏だけなのか?
 修復の仕方は、まったく知りませんので、教えて下さい。お願いします。
 取り急ぎ質問まで。

神奈川県 主婦 H.aさん

ご質問ありがとうございます。
 まず、復元や修復の原則をお話しします。
 遺物は、例え割れて出土したとしても、その状態が本来であって、復元は現代人の意志によって為される行為です。したがって、何時いかなる時も、もとの状態に戻せるものでなくてはなりません。そのため、それぞれ独自の技術を開発し、全国で様々なものが使用されるとなると、後世、色々な問題が生じることとなります。
 さて、土器の復元方法ですが、まず、出土地点や遺構での接合関係を確認し、粘着力の弱いテープで仮止めします。チョークやチャコペンなどでしるしを付ける場合もあります。次に接合で欠損している部分を探します。これは、遺跡全体から出土している破片と照合します。これにより、遺構間での遺物の移動が把握でき、人の営みを知る手がかりとします。こうして、仮止めで組み上げられ、これ以上、接合する土器片がないと判断すると、接着剤で本接合します。欠損部分が少なく、完全な形状に近ければ、近いほど、接合したときの角度のブレが歪みとなり、最後に隙間が開いてしまったり、土器片が入らなくなったりしますので、慎重かつ大胆に組み上げます。そして、接着剤が硬化し強度が得られると、欠損部分の補填を行います。補填には石膏もしくは樹脂を使用します。石膏は接合強度・作業性に利点がありますが、破損しやすいこと・重いことの欠点があります。樹脂は、破損しにくく・軽い利点がありますが、火に弱い欠点もあります。しかし、土器が火災に遭うのは慮外ですから、専門の修復業者は樹脂を使います。現在は、以前ほど高価でなくなったため、埋蔵文化財関係機関では、石膏の代わりに多く用いられるようになりました。欠損部の補填後は、彩色し土器の近似色を施し、土器の復元は終わります。

 それでは、最後に例として挙げられたご質問にお答えしましょう。
 (1)土器の破片を接着する接着剤は何を使うのか?ですが、現在は市販されている家庭用・工作用の接着剤(黄色いパッケージでアルファベットC記号のあるもの)を使用しています。これは、成分中の有機溶剤にアセトンを含むため、後日、アセトンによりきれいに分離・除去できます。今から20年前くらいは、家庭用・工作用の接着剤(赤・黒色のパッケージでアルファベットG記号のあるもの)が主流でしたが、こちらは成分中に天然ゴムを含むため、20年を経た今日、ゴムの劣化により剥離する事態が続出しています。
 (2)土器の無い部分を、石膏で補うとしたら、接着剤として石膏はつかえないのかどうか?についてですが、接合する土器片が認められない場合、石膏で補填してきました。そのため、石膏を接着剤に使用できないかとのご質問と拝察致しますが、石膏は、大前提のもとの状態に戻せる材質ではないのです。また、接着剤は使用量を出来るだけ少量として、土器表裏面にはみ出ないようにします。これは、接着剤の厚みで土器全体が歪むのを防ぐとともに、土器を汚さない配慮によるものです。さらに、接合時間も大切です。市販の接着剤ですと、固化するのに3〜4時間かかります。ここまでの時間は必要としませんが、土器を接合するときは、接合部位を確認して、いざ、本番となると、こちらを着け、あちらを着けして、歪みを直してと、仮止めをしながら接合するので、ある程度の余裕が必要です。石膏を使用しますと、これらの点においてもマイナスとなるので、接着剤としては使用しません。
 (3)土器の破片だけが足らないだけだとしたら、接着剤だけなのかまたは石膏だけなのか?についてですが、土器の接合には大きく二つの目的があります。ひとつは、A.土器を破損前の状況に復元すること、もうひとつは、B.報告書作成などの資料化のために補強することです。Aの場合は、写真撮影や後の展示にたえられるように、欠損部分に石膏や樹脂を補填し、土器と同色の彩色を施します。Bの場合は、簡易樹脂で補強、または、石膏・樹脂で補填後、彩色をしないなどの簡略化が図られます。いずれの場合も、目的にあわせた接合・復元がなされるのです。

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