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実測図はどう書けばいいのですか?
基準線とは高さと直径のことですよね?測定点とは何ですか?
実測図を書く手順というか、流れを説明して欲しいのですが。
香川県 学生 りかさん
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ご質問ありがとうございます。
考古学を学ぶとき、基礎技術として修めなくてはならないものの一つに実測法があります。埋蔵文化財センターなどの職員の中には、大学に入り立ての頃、研究室の先輩に「見てろ」「じゃあ、やって」と言われ、ようやくできた実測図を破り捨てられて「もう一回」と言われた経験のある人も多いことと思います。こうして、経験と時間を積み重ねて、身に付けていくのが技術というものです。
では、実測法についてのお答えを...。
実測には、二つの対象があります。ひとつは遺跡・遺構の実測図、もうひとつは、遺物の実測図です。ご質問の様子から、遺物実測法のことと推察し、そのことについて、お話ししましょう。
まず、実測図を何のために作成するかという観察視点が必要です。実測図は理解図とも言われるように、ただ、法則に従って作図するだけでは、使えない図面が増えるだけです。最低限、どのように作ったかが解り、工程を復元できるような設計図をつくらければなりません。次に、土器の実測法について述べましょう。
1 土器の特徴が図に表現できる位置をえらぶ。
2 土器の口径・底径から中心を割り出す(a口径の半分を中心とする例・b底径の半分を中心とする例・c土器正位置での口径・底径の中間を中心とする例など実測図作成の考え方により違いがあります)。
3 基準線を設けます。基準線は、a土器を正位置に置いた時の底部を基準とする場合と、b土器を逆位置に置いた時の口縁を基準とする場合があります。ここではaでお話しします。図上基準線となる水平な実測台の上に、土器を置きます。その時、土器の中心を実測台の中心とします。
4 土器正面中心線の右90度線上に、直角定規を垂直に立て、土器の最も外にある外面と接触させます(二本の方眼入り直角定規をテープで止めて垂直になるよう工夫し、支えにならない面を正面側にする)。
5 中心線から、土器外面で定規と接触した数値を計測します。
6 図面に基準線を記入し、中心線を引きます。そして、5で得られた数値を中心線右側にとり、基準線からの垂直線を引きます。
7 測定点を計測します。測定点は、土器正面中心線の右90度線上にある、特徴のある部分は勿論のこと、5mm間隔など、規則的に計測する場合もあります。測定点の計測方法は、4で立てた定規から水平に定規を当て、定規・土器外面間の数値を、基準線からの高さとともに計り込み、図に点で記載します。
8 右側の測定点を底部まで記入し終えると、土器の外形線に合わせながら、点を線でつなぎ、土器右側面を完成させます。
9 同様に左側面も実測します。
10 内面は、4と同じように直角定規を左右に一本ずつ立て、その間に定規を水平に固定します。
11 図面には、水平定規と基準線との距離を測り、水平線を引きます。
12 今度は、水平定規から垂直に定規を延ばし、定規・土器内面間の数値を計測します。
13 測定値を記入し、最後は土器の器面を観察しつつ点を線でつなげ、内面の実測を終えます。
14 内面は、図上中心線の右側に記入し、左側は外面を記入します。それぞれの計測は、7を応用して行います。
15 土器の観察は、土器を作った人もしくは作られた土器の立場になって、作法・順序とうを検証し、その土器に認められるそれらの痕跡を記録していきます。そして、観察で気付いたことは、どんどん図面に書き込みます。
だいたいの流れを説明しました。現在はマコ(真弧)という便利な道具があり、測定点を少なくして、マコを器面に当てそれを図面に書き込むことが多いです。
実測についてを記した本も何冊か発売されています。是非、ご一読してください。 |
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